古賀市議会定例会が6日、開会しました。再選後最初の定例会のため、所信を表明しました。以下、全文を掲載しますのでご一読いただけると幸いです。
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所信を表明いたします。
私はこのたびの古賀市長選挙で再選し、12月23日から2期目に入らせていただくことになりました。まずは、すべての市民の皆さまに心から感謝を申し上げます。
今回の選挙は、私以外に立候補者がおらず、市制施行後初めて、古賀町時代の1987年以来35年ぶりの無投票となりました。得票という形で数字が見えないからこそ、一層謙虚に、市民の皆さまの声を聴かせていただきながら、皆さまと共にまちづくりを進めてまいります。もとより、この1期目の4年間、まちづくりの理念として「オール古賀」を掲げ、あらゆる立場の皆さまの思いをくみ取りながら、社会の調和点を見出すことを意識して、自治体経営に当たってきました。これからの4年間も、市議会の皆さま、市民の皆さまからご指導ご鞭撻、ご理解ご協力をいただきながら、職員とともに務めを果たしてまいります。
今、私たちは変化が激しく、不確実性の高い時代に生きています。グローバリズムや技術革新で社会、経済がつながる中、国家間の戦争や対立、人と人との分断、地球環境の破壊とこれに起因する新興感染症や大規模災害、貧困と格差の拡大といった事態に直面し、私たち一人ひとりの生存そのものが危うくなっている現実。この世界を、私たちより後の世代に健全な形でつないでいくことが、人類史上、最も困難になっていると、私たちが厳に認識すべき段階にあると考えています。
こうした中、日本は人口減少時代に入りました。超高齢社会となり、生産年齢人口が減少の一途をたどりながらも、少子化に歯止めを利かせることができていない現実を直視し、次の世代にツケを回すことなく、私たちが享受しているよりも豊かな社会を子どもたち、孫たち、さらにはまだ見ぬこれから生まれ来る先の世代につないでいくことができるか。社会の持続可能性を高からしめることができるか。まさに、先行世代である私たちが、グッド・アンセスター、よき祖先になれるかが問われています。
地方自治体の行財政運営も、こうした認識を基礎として展開していかなければなりません。だから、これからのまちづくりのキーワードは「未来への責任」と考えています。
これからの4年間、古賀市のためにしていきたいことを申し上げます。
まずは、産業力の強化と移住定住の促進です。古賀市は暮らしやすく、働きやすい。都市近郊で自然に恵まれ、農業・商業・工業が息づく、魅力的なまちです。九州自動車道のインターチェンジがあり、国道3号、国道495号、主要地方道筑紫野古賀線といった主要道が走り、JR鹿児島本線の駅が3つもある交通の要衝。この地の利を生かし、まちづくりが進められてきたし、これからも進めていかなければなりません。
適正な土地利用で企業誘致を推進します。将来の税収確保や雇用の創出のため、古賀インターチェンジ周辺の今在家、新原高木、大内田の各地区で工業・物流団地を整備します。新たに、青柳迎田地区で工業団地の形成を検討します。工業力の増強とあわせて重要なのが、国家の根幹である農業の振興です。都市近郊の生産地であり消費地でもある強みを伸ばすため、生産性向上をめざして薦野清滝地区の基盤整備事業を推進します。また、農地保全や農業用施設の維持・管理、デジタル技術の活用、鳥獣被害や放置竹林の対策を支援します。青柳釜田地区における滞在・観光機能を付与した食品製造工場の建設や古賀グリーンパークの活性化と連動し、地産地消の拠点「コスモス館」の充実をめざします。
10年後の時点で人口6万人規模が維持できるよう、居住機能の強化を本格的に検討し、進めます。古賀市も人口の自然減が年々拡大しており、全国的な人口減少の影響を受けて社会増を一定に確保することも厳しくなっています。一方、近年は企業誘致を強力に推進しており、今後、本市における労働人口の増加が見込まれ、確実に定住につなげるための「受け皿」確保が重要となります。こうしたことから、新たに古賀中学校周辺で市街化をめざした土地利用を検討します。中心市街地のJR古賀駅周辺活性化に取り組み、「コンパクト・プラス・ネットワーク」の形成を進めます。古賀駅東口エリアの開発を推進し、道路や公園、居住や商業、医療、教育などの多様な機能を集積、誰もが居心地の良い街並みをめざします。古賀駅西口エリアは、空き店舗改装による拠点形成や新たな事業者の進出を支援し、市内外の人の交流を促進します。新たな道路整備による古賀駅周辺へのアクセス強化を検討するとともに、中心市街地と小野地域や青柳地域がより強くつながることを念頭に置き、市域全体の一体的な発展をめざします。AIオンデマンドバスなど多様な手法で持続可能な公共交通網を形成します。JR千鳥駅東口のロータリーを整備し、西鉄宮地岳線跡地は安全・安心を前提に道路や遊歩道、憩いの空間を形成します。花見佐谷線の整備を進めます。更新時期を迎える浄水場のあり方を検討します。薬王寺温泉オフィス「快生館」へのサテライトオフィス誘致やコワーキングスペース利用、イベントでの活用を促進、多様な人材の交流で新たな価値を生み出し、移住定住の促進にもつなげます。国史跡・船原古墳、唐津街道・青柳宿、白砂青松の海岸、薦野城をはじめ観光資源の活用を推進します。福岡県や柳川市、新宮町などと連携し、「立花宗茂と誾千代」の大河ドラマ招致運動を展開します。
続いて、チルドレン・ファーストです。すべての子どもの育ちと学びを社会全体で支えていきます。新型コロナウイルス禍における子ども・子育て支援の様々な取り組みは各方面から前向きなご評価をいただいたところですが、特に、緊急事態宣言が発令された当初、全ての公共施設を閉鎖せざるを得ない中で、乳幼児と保護者の憩いのスペースだけは開き続けたことはご承知の通りです。まだワクチンも存在しない段階での未知のウイルスの感染拡大防止と、子育て家庭が社会から隔絶されることで生じる別のリスク。これらを勘案した結果、子ども・子育てを守る判断をしました。これが、現在の市政運営上の基本的な立脚点です。
子どもと子育て家庭を見守り、包括的に支援します。妊娠期から出産、乳幼児期を切れ目なく支え、産前・産後ケア、発達段階に応じたきめ細かな相談支援体制を強化します。すべての子どもの誕生をお祝いし、赤ちゃん用品や子育て応援券を贈ります。多胎児家庭の家事・育児を支援します。経済的に厳しい妊婦に産科受診料を助成します。流産や死産などの「ペリネイタル・ロス」のケアの充実を図ります。ひとり親家庭や未就園児、障がい児、ヤングケアラーを支え、子どもの貧困対策、児童虐待防止に取り組みます。十分な保育の受け皿を確保し、質の高い幼児教育・保育サービスを提供します。
子どもの医療費助成を拡大し、就学前を無料化します。現在の3歳未満に加え、まずは3~6歳の子どもの医療費を無料化します。そのうえで、18歳までの拡大についても段階的に検討します。なお、本来は国の責任で全国一律に実施すべきものであり、全国市長会を通じて18歳までの無料化を政府・国会に強く働きかけます。
教育環境の充実を図り、「生き抜く力」を涵養します。全小中学校・全学年での原則35人以下学級、多様な人的配置、デジタル機器の積極活用で、一人ひとりのニーズに応じた教育を実現します。インクルーシブ教育を推進します。増加傾向にある不登校児童生徒の支援体制の充実を図ります。校舎改修を着実に進め、トイレを洋式化・多目的化します。地域の特性を生かした余裕教室の効果的・効率的な活用を行い、生涯学習やコミュニティの拠点にするとともに、多世代交流促進の場を提供します。地域や子ども支援団体と連携して居場所を確保します。通学合宿などの多様な体験活動を後押しします。
なお、2023年度のこども家庭庁の発足や、政府・国会における財源論も含めた子育ての総合的な支援のあり方の検討、議論が始まっていることなども踏まえ、こうした動きに主体的に関わり、市政運営につなげていきます。
誰もが健康で安心して暮らしていける地域社会をめざします。超高齢社会に対応し、全世代型の健康づくり・介護予防、地域福祉を推進します。地域や学校、企業、市民団体と連携し、健康チャレンジ10か条やヘルス・ステーションの普及促進、特定健診やがん検診の受診勧奨に取り組み、市民一人ひとりが自らの健康を意識できる環境をつくります。高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らしていけるよう、地域包括支援センターできめ細かく相談に応じます。要介護などで移動が困難な方のごみ出しを支援します。認知症への理解促進、高齢者のペットとの暮らしの支援に取り組みます。千鳥苑は当面は現建物で社会福祉サービスを提供し、老朽化を踏まえ、今後のあり方を検討します。障がい者の方々に個々のニーズに応じた日常生活のサービスを提供し、事業所や企業等と連携して就労を支援します。高齢者の独居、8050問題、介護と育児のダブルケア、孤独・孤立など複雑化・多様化する課題に対応するため、ソーシャル・ワーカーなど専門職による包括的な相談支援体制を充実します。
あらゆる世代の生涯学習活動を応援し、スポーツ・文化を振興します。福岡県と連携し、古賀市の特性を生かした新たなスポーツ関連施設を検討します。
人と動物の健康、環境の健全性は一つのものと考える「ワンヘルス」の理念のもと、ゼロカーボンシティとして環境にやさしいまちをめざします。ワンヘルスの世界の先進地である福岡県と連携し、人と動物の共生社会づくり、生物多様性の保全、地球温暖化対策などに取り組みます。脱炭素社会に向けて企業連携による取り組みを検討します。4R推進によるごみ減量と適正処理を推進します。
デジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進します。デジタル活用で市民一人ひとりのニーズに合ったサービスを提供し、生活利便性の向上を図ります。市役所の様々な手続きのオンライン化を推進し、人的資源を多様な課題解決の政策立案に振り向けるとともに、人工知能(AI)や量子コンピュータの先進技術を積極的に活用することでデータ分析などによる業務の効率化・高度化を図り、政策の実効性を向上させます。デジタル社会に取り残される人がいないよう、きめ細かいデジタル格差解消のための支援策を講じます。
この社会の全ての根幹は、人権の尊重であり、政治の究極目標は世界平和の実現です。多様な生き方を保障し、部落差別をはじめあらゆる差別を許さず、その解消に向けた市政運営を徹底します。LGBTQなど性的マイノリティの権利保障を進め、性の多様性への理解を広げます。男女が共に能力を発揮できるジェンダー平等社会をめざします。アジアや欧米との国際交流、多文化共生を推進します。名誉市民の中村哲さんを顕彰し、その志と功績を次代につなぎます。平和首長会議や日本非核宣言自治体協議会のメンバーとして核兵器廃絶と世界平和をめざします。
危機管理を徹底します。大規模災害や感染症の流行に備え、即応します。消防団の活動を支援し、自主防災組織との連携を強化します。福岡県と連携し、河川の適切な維持管理・改修を図ります。雨水浸水対策を強化します。
まちづくりを推進するためには、政府・国会や県に古賀市の考えを適時的確に伝え、ご理解ご協力をいただくことが重要です。地元選出の国会議員や県議会議員と緊密に連携するとともに、私自身が全国市長会はもとより「活力ある地方を創る首長の会」や「公民連携推進全国首長フォーラム」などの首長グループに参画しながら、その成果を市政運営につなげていきます。糟屋郡7町、福津市、宗像市など周辺自治体と連携し、それぞれの地域資源を活かした広域的な振興を図ります。
最後に、みんなで力を合わせ、切磋琢磨するからこそ、まちがよりよくなっていきます。ひと育つ、こが育つ。これからも「現場主義」を理念として、市民の皆さまと共に歩んでいきます。「オール古賀」で、誰もがまちづくりに関われるよう、政策づくり、予算編成を「見える化」し、地域ごと、政策ごとの対話集会を開催します。地域コミュニティの活動を支援し、さまざまな主体が連携したまちづくりを進めます。子どもたちの声も聴き、その感性を市政運営につなげていきます。SNSやブログなどを日常的、戦略的に活用し、古賀の魅力を市民の皆さまはもとより世界中の多くの皆さんに発信するなど、シティプロモーションを強化します。ここまで申し上げてきた様々な取り組みを通じて、古賀の関係人口を増やし、市民の皆さまと一体となってまちづくりを進めます。
古賀市は2027年に市制施行30周年を迎えます。温故知新。今の古賀を築いてきてくださった人生の先輩方、先人の皆さまのご尽力に感謝し、継ぐべきものを確実に継ぎ、社会の価値観の変容を捉え、新たな発想を加え、前に進んでいきます。子どもたち孫たち、これから生まれてくる世代のためにまちをつくり、「未来への責任」を果たす。古賀の新たな時代を拓く。その決意です。市議会の皆さま、市民の皆さま、引き続きご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
以上で私の2期目に向けての所信表明といたします。ご清聴いただき、ありがとうございました。
令和4年12月6日
古賀市長 田辺一城
投稿者:【mayor2010】
2022年12月06日 17時33分
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