ひと育つ こが育つ
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父親支援のNPO法人ファザーリングジャパンを設立し、
多数の著書を出版されている安藤哲也さんに「父親であることを楽しもう」
と題して2回シリーズで語っていただきます。
1962年生。出版社、IT企業など9回の転職を経て、2006年に父親支援のNPO法人ファザーリング・ジャパンを設立。「笑っている父親を増やしたい」と講演や企業向けセミナー、絵本読み聞かせなどで全国を歩く。
最近は、管理職養成事業の「イクボス」で企業・自治体での研修も多い。厚生労働省「イクメンプロジェクト推進チーム」顧問、にっぽん子育て応援団 共同代表も務める。著書に『パパの極意~仕事も育児も楽しむ生き方』(NHK出版)、『できるリーダーはなぜメールが短いのか』(青春出版社)など多数。3児の父親。
最近は育児に積極的な男性が増えました。世の中の大きな変化を実感します。「イクメン」という言葉も定着し、自宅で子どものケアをしているパパは多いでしょう。しかし父親も育児をするようになればいろいろなことで悩みます。
仮にいま、「子どものことがよくわからない」「子どもとどう接していいかわからない」というお父さんがいるとしたら、それは「能力」の問題ではないということを最初にお伝えします。
父親が育児に何となくぎこちないのは決して技術の問題ではなく、「接触している時間」の問題が大きいのですが(国の調査でも、父親の一日の平均育児時間は母親の四分の一以下)、それは個人の問題でなく、おそらく私たちの意識をはじめ社会全体が、古典的な男女役割分担意識に囚われているからです。
つまり「外で働き収入を上げ家族を養うこと」が父親の役割で、「育児や家事は母親がやるもの」と思いこんでいる人はまだ少なからずいるのです。
そういう私も20代の頃は好きな仕事に没頭していました。でも娘が生まれたとき、直感的に「育児って義務ではなく、楽しい権利なのではないか?」と思ったのです。
子どものいる人生を目いっぱい楽しみたい。主体的に子育てに関わることで、ひょっとしたら父親として自分が成長していけるのでは?という予感があったのです。そのためにはまず「男は仕事。女が家事育児」といった古い価値観を捨てる。意識改革、つまり自分の中のOS(オペレーティング・システム)を入れ替えねばと悟りました。
そのOSが入れ替わると、男性も「仕事だけ」の生活から脱却できます。仕事とのバランスを考え、なるべく早く帰宅したり土日も育児家事を妻と協業するようになります。
私が主宰するNPOの父親セミナーでは子どもが乳幼児のパパが多いですが、彼らの多くは意識はあるが平日はやはり仕事で帰宅が遅く、「週末の短い時間で、子どものハートをつかめる方法を教えてください!」なんて質問が出たりします。が、そんなものはありません。
子どもと良好な関係を築きたいのであれば、労を惜しまず毎日少しの時間でもいいから子どもに関わることが肝心です。
残業が多いパパが積極的に育児に関われる方法があります。それは「朝の育児」です。小学生のパパも朝ちょっと早く起きて、子どもと散歩したり、会話するだけで子どもは喜び、関係性は深まります。
またパパ自身の生活も規則正しくなり、健康になって仕事の能率が上がった人もいます。
もう一つは、「ママを支える」ということです。家事を分担するだけではありません。日々、大変な子育てをしてくれている妻に感謝し、ねぎらいの言葉をかけてあげること。
精神的なケアが大事なのです。夜遅く帰ったとき子どもが寝てしまっていても、ママがまだ起きていたら話を聴いてあげてください。ママは一日中、聞き分けのない子どもと一緒に過ごし、家事に追われヘトヘトに疲れています。
でも夫が帰宅するまで起きて待っていてくれるのは、「こんなことができるようになったの!」という子育ての感動、わが子の成長をパパと分かち合いたいのかもしれません。
パパが耳を傾けそれをちゃんと受け止めてあげれば、「認めてもらえた」と安心し、ママの気持ちは満たされて、夜ぐっすり眠れます。
そして翌朝、笑顔で子どもに向き合えるのです。そのママの笑顔が子どもの情緒を安定させ、健やかな精神を育むのです。
つまりママを支えることが立派な「間接育児」になっているのです。ぜひパパたちはこの視点を持ってください。ママが必要としているものは夫からの「受容」「共感」「賞賛」です。子どもと入浴、絵本など「直接育児」だけが育児ではないということです。子どもも「大好きなママ」を優しく労わるパパのことが好きになるので、父親を受け入れるようになります。
特に子どもの思春期はこの夫婦関係が安定していることが大事です。いつでも家庭が安定していれば仕事にも身が入ります。私もこれで、仕事も育児も両方楽しくなりました。
OSを入れ替えて少し働き方を見直し、子どものいる暮らしを楽しむことで父親も豊かな人生を送ることができます。
自分の人生を肯定する父親の笑顔こそが、夫婦のパートナーシップや子どもの自尊心を育みます。父親であることを明日からもっと楽しんでみませんか?
人権センターWith(ウィズ)
男女共同参画・多様性推進係
Eメール:danjo@city.koga.fukuoka.jp